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『女囚と共に』を巡るアレコレ

日本映画専門チャンネルで、久松静児監督『女囚と共に』(1956.9 東京映画=東宝)を観る。
素晴らしい!掛け値無しの豪華女優共演による、女子刑務所群像劇。
なんせ所長が田中絹代、保安課長が原節子である。
目立ってる看守は菅井きんである。
子を亡くし、房内で首吊り自殺する女囚が岡田茉莉子である。
レズっ気のある女囚が淡路恵子である。
後述する以外の女囚に、木暮実千代 千石規子 浪花千栄子。

ブラ姿を見せる、麻薬でイカれた踊り子の女囚は谷洋子だ。キネ旬の紹介では、パリから帰ったばかりとある。
フランス生まれの帰国子女で、今は忘れられた国際女優、これが日本映画初登場。本作ではズベ役だが、良家の出。
津田英学塾(現 津田塾大学)に進み、英語を身につける。
戦後の一時期は、母校の東京女子高等師範学校附属高等女学校(現 お茶の水女子大附属中学・高校)で英語教師もしていたらしい。
カトリックの給費生となり渡仏、パリ大学(ソルボンヌ!)留学中、ショウビズの道に惹かれナイトクラブダンサーに。
出来て間もないクレイジー・ホースにも出演、ゲイシャ・キモノダンスでウケを取る。
名匠マルセル・カルネ監督に見出され、1954年からフランスの舞台、映画にも脇役出演。
カンヌ映画祭で本作の監督である久松や黒澤明とコンタクト、一時帰国しこの映画に出た後は、東宝で もう1本『裸足の青春』に顔出し。
谷口千吉作品、当時の夫でフランス男優ローラン・ルザッフルも司教役で出演したが、谷はストリッパー役。
こりゃいかんと思ったか、フランスへ戻ってから開運。
ベトナムが舞台だがイタリアの撮影所で作られたハリウッド映画『静かなアメリカ人』出演をきっかけに、東洋的エキゾチシズムを売りにした国際女優として80年代まで活躍、ガンで99年死去。
ルザッフルと61年に別れた後、長く付き合ったロジェという恋人がいたそうで、ブルターニュ・BINIC (22) の墓地で一緒に眠っているという。
彼女の墓だが、まるで建築物のよう!裕福で幸福な人生だったのでは。

他に、中北千枝子や滝花久子も助演。
往年のアイドル 恵とも子の母・恵ミチ子が女囚役で出ていると書かれた資料も、但しオープニングにはクレジットされていない。

見応えがあるが、それは豪華女優陣や2時間半近い上映時間のせいだけじゃないと思う。作劇のお手本と言うべき、起承転結の構成が素晴らしく、余韻の付け方(冒頭、釈放されたあと挨拶に来た中北千枝子。ニッセイ?のおばちゃんに就職したのに…ラスト、また刑務所に戻ってくる!)も見事なのだ。
刑務所の慰安会。五木の子守唄の寸劇と、刑務所内で養育され芝生で無心に遊ぶ女囚の赤ちゃんを交互に見せるくだり。
反抗的だった女囚と刺されて瀕死の保安課長が輸血で繋がるという、ベタだが感動的な場面なんて上手すぎ。
これぞ「映画」です!参った。

クレジットは何故か無いが、ベースとなったのは、戦後GHQの意向もあり日本で女性初の女子刑務所長となった三田庸子(みた つねこ 1904〜89)が書いた「女囚とともに」。
アメリカ人の血を引きキリスト教信者で、夫を早く亡くしている。前職は女学校の舎監であった。
映画では特定されていないが、彼女が赴任したのは和歌山の刑務所である。
この本は、映画公開の前年に朝日新聞社より新書で出版された。
タイトルが、原作と映画では ちょっとだけ違う。ソコには大人の事情が働いているのだろうか?

驚くべきは脚本の田中澄江で、本作が公開された1956年9月11日の翌日、大映系で封切られた脚本担当作が『夜の河』。
さらに2ヶ月後の11月、東宝系で封切られたのが『流れる』。
日本映画史に残る作品であるのは言うまでもない。
この年は他に4本の映画脚本を書いており、驚異的なクオリティの仕事を残した年と言えよう。

内容ゆえ、男優陣の影は薄い。
刑務所職員に十朱久雄と上田吉二郎。
原節子の前夫に伊豆肇。
赤ちゃんもいるのに、久我美子の前科を知って三下り半。別の女と結婚した無情な男が、滝田裕介。彼女は絶望し自殺覚悟で男の新居に放火する。
倒れた収監中の恋人・安西郷子の死に目に会えなかった青年が、加藤春哉。
香川京子の恋人で村祭りに行くのは、ナント天津敏(キネ旬のデータで この役は、松尾文人になっている)。
孤児の香川を引き取り育てた養父でありながら犯し、彼女に殺されるのが小杉義男。

ラスト、模範囚だった香川は、請われてバツ2の教師のところへ嫁入りする。
画面には出てこない この男、「今度は ちょっと苦労した人を求む」だって!
そーゆー依頼を、厚生委員のオバサンにするのが驚きですが。
地位はありそうだけど…彼女は、今度こそ幸せになれたのでしょうか?

東宝技術部のクレジットは無いが、久我の放火で炎上する家と刑務所夜景カットで特撮あり。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

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