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クラーク・ゲーブル主演コメディ Comrade X の戦車特撮

山本弘がレトロ特撮を扱った新刊で取り上げているらしい…今日時点で、まだ本屋でチェックしてませんが… Comrade X (1940 日本劇場未公開)というアメリカのコメディ映画を観た。

映画史に残る、前年公開のロシア(旧ソビエト連邦)風刺コメディ、エルンスト・ルビッチ監督『ニノチカ』の夢再び!というわけで。
共同脚本を担当したヴァルター・ライシュを原案に迎え、巨匠キング・ヴィダーが監督。
クラーク・ゲーブルが主演、かの『風と共に去りぬ』公開から ほぼ1年後の、1940年暮れにアメリカで公開された作品である。
『ニノチカ』に使節役で出てたフェリックス・ブレサートとシグ・ルーマンも助演しており、失敗作として忘れ去られた姉妹編と言うべきか。
ナチスドイツの人物も登場するが、当時はロシアと仲良し。1939年の、独ソ不可侵条約が生きている頃の制作だからね。
スターリンと交わした条約を一方的に破って、ヒトラーのバルバロッサ作戦が始まる1941年6月は、公開の半年先である。

ソビエトに駐在し、“同志X” の名で密かに無検閲のニュースを流しているアメリカのニュースリポーター(ゲーブル)が、ついに当局から睨まれる。
ロシア人でホテルのボーイ(ブレサート)と、娘の市電運転手(当然美女の、ヘディ・ラマー。オーストリア出身、チェコ映画『春の調べ』の全裸シーンで世界的に知られたが、イロイロあって渡米。本作の2年後、作曲家ジョージ・アンタイルと「周波数ホッピングスペクトラム拡散」に関する特許を取って、戦時中 米軍に協力しようとした発明家でもある。こんにちケータイ電話や無線LANに使われているこの技術、映画業界では遠隔操作キャメラに応用)が一緒に、ルーマニア経由で自由な国アメリカへ脱出するまでの物語。
ゲーブルとラマーが恋に落ちるのも、定番。

公開当時のニューヨークタイムズ評がネットで読めるが、的確であった。
特撮を使用したシーンだけ、褒めてあるのだ。

…映画で最高なのは、終わりの戦車追跡シーンです。
古いドタバタ喜劇のノリで、スマートな仕上げ。そして刺激的。
多くの退屈な場面も補います。…

MGMの特撮技師 A・アーノルド・ギレスピーとスタッフが描く、ゲーブルたちが奪って逃げた戦車を、数十台の戦車軍団が追うクライマックス。
脱走カーチェイスの後、戦車を積んだ輸送列車が登場するあたりから、特撮ファンは必見。
アウトドアで撮られたらしきミニチュア戦車(走行できる実物大も、1台登場。但しキャタピラ周りは怪しいのでハリボテでしょう)の操演が素晴らしい。
ラジコンだろ!というのは容易いが、数十台(ざっと30台以上あるようだ)のミニチュア戦車が一斉に方向転換し走り去るワンカットは、どうやったのかね?OKが出るまで、膨大なリテイクが出ているんじゃないか。
ラジコン操縦機を持った操演スタッフが、戦車の台数分の人数でスタンバイしてる図を想像して頂きたい。へディ・ラマーが特撮現場を見学に来ていたら、さぞや興味を持ったことだろう。
崖落ちや渡河、木を押し倒すカットも重量感があって良。
農家に突っ込むシーンは、家の壁を破り裏側へ走り去るミニチュア戦車をスクリーンプロセスで一瞬見せ、横へパンして驚く住民のリアクション演技を映す…という、手の込んだ事をしている。

ネット情報だと、2011年にオークションでミニチュア戦車が出品されており、11万ドルで落札。金属製でサイズは26インチ、モーターなど動力の有無については不明。
ミリタリー マニアじゃないので分からないが、1930年代の水陸両用ロシア戦車 T−37かT−38をヒントにした、オリジナルデザインじゃないですかね。

クライマックスだけは、一見の価値ありの珍品映画。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(1) * pookmark

コメント

山本弘「あなたの知らないレトロ特撮の素晴らしき世界」を、ようやく書店で見かける。
面白かったが、こういう本は得意分野ごと執筆者を分けた共著が望ましいと感じた。山本氏は特撮の見巧者だが、1人の調査範囲では、ジャンルが広すぎて。
しかしまぁ、参考資料に名がある海外の某特撮研究サイトから、多く(半分以上?)を得ている本ですな。私もここから、資料写真を多数 拝借保存してますから、ヒトの事は言えませんが。

Comrade X(1940)の、戦車軍団一斉方向転換の仕掛けについて。
山本氏も、当然このカットにシビれた模様。
方向転換時にミニチュア戦車のキャタピラが動いてない事に気付いたのは流石だが、仕掛けについては研究サイトの記事を引用しておられる。
セットの地面に何本もの溝(戦車台数分の操演スタッフが入って隠れられるようなトレンチか?)を掘り、板状のガイド(研究サイトには、ロッドと書いてなかったっけ?)を下から突き出して方向転換させたようだ…との事。

だが、数十台の戦車は一斉にターンするとワンカットで前方に走り去り、キャタピラ跡が残る地面がバッチリ映る。ミニチュアは金属製で重量があるから、溝やガイド突き出し用の穴があれば、バレる気がするんだけどなぁ。
セットは屋外のようだから、仕掛けを隠すためにキャメラを止めたとすれば、時間経過で光の感じが変わるはず。だが、そういった変化は画面から感じられない。
手品的で、秀逸な特撮カット!
Comment by J・KOYAMA @ 2017/11/19 7:00 PM
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