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『指導物語』に、円谷英二の特撮が

日本映画専門チャンネルで観た、陸軍の鉄道部隊兵士(藤田進ら)にSL C58運転を指導する老機関士(まだ30代の丸山定夫。移動演劇の桜隊として広島入り、被爆し44歳で死去)の話、『指導物語』(1941.10 東宝)。
太平洋戦争突入の2か月前に公開。国策寄りの劇映画だが、鉄道ファンには たまらない描写を多数含む、実車だけを使ったリアリズム主義の映画と思い観ていたら。
なんと、夜の山村を走るSLを高所から撮ったような特撮カットが!
ジオラマ風のミニチュアセットもいい感じ。雪中で前方を確認しに行った兵士(中村彰)が機関車から落ち、緊急停車する遠景カットもミニチュア処理だ。
運転室の場面ではスクリーンプロセスを多用。クレジットは無いが、この時期の東宝作品なら特撮に円谷英二(と弟子)が関わっていないことの方がおかしいだろう。竹内博の円谷作品リストに、本作は含まれていない。
機関車から落ちる兵士が直前に過去(華やかな学生時代、スキー列車の様子)を回想する、かなり凝ったオーヴァーラップもあり、オプチカルプリンター使用だろうか。

監督の熊谷久虎は、本作にも助演した原節子の親族としても知られる(時期不明だが、熊谷は原の妹と結婚)。
思想的には一癖あった人物のようだが、本作の鉄道撮影は凝ったもので賞賛できる。名手・宮島義勇キャメラマンの手柄だけではなかろう。
後述する事故が遠因か、1960年代以降は作品が無く、86年に82歳で亡くなった。
繰り返される釜たきトレーニング、2両の機関車が並走してくるのを正面から撮ったカット、蒸気溜めの横あたりにキャメラを据えて運転者と流れ去る風景を同時に捉えたカットは印象的。
「石炭を くべるスコップは、兵隊の銃と同じ」みたいなセリフもある。
出征する教え子の兵士を乗せた列車を、感極まった老機関士が走って追いかけるラストが良い。

本作で鉄道撮影に自信を持ったであろう熊谷は、戦後 十数年ぶりに監督をした原節子主演『白魚』(1953.8 東宝)で、御殿場駅における夜間SL撮影(線路上にセッティングしたカメラ前で列車が停止するカット)をリハーサルなしで強行した結果、キャメラマン会田吉男の死亡事故を起こしてしまった。
会田は何と、原の実兄だ…享年43という。
戦後、幾多の名作に出演し絶好調だった原。その波に乗りファミリーで作った感のある映画での事故が、彼女の早期引退に繋がったという説(鈴木一八「映画裏方ばなし」)もあるね。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

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