<< June 2017 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>

オチが効いていた『喜劇 右むけェ左!』

日本映画専門チャンネルで観た『喜劇 右むけェ左!』(1970.12 東宝)は、前田陽一監督作品。
高度経済成長下、万博が開催された頃。
競争社会を勝ち抜くため、モーレツ社員養成研修をする企業が見られた。
NHKアーカイブスで観た「現代の映像・社員改造」(1969)も強烈だったが。
藤子不二雄Ⓐの「黒ベエ」(1969〜70)では、旧日本軍式社員教育に材を採った重いエピソードがあったっけ。

本作は、下着メーカー(ワコール)が舞台。
戦中派のダメ中間管理職(犬塚弘)とスケべな若手部下(堺正章 なべおさみ 小松政夫ら)が、なぜか新設の外国課に大抜擢。研修として自衛隊へ体験入隊するという話。
犬塚は戦時中に入営していた場所が基地になっていることに気付き、昔を思い出して俄然ハリキるという展開だが。
終戦間際に上官(田島義文)が基地内に埋めた軍資金を探すエピソードがあり、自衛隊創設20年式典でザ・タイガースの面々が戦車の上で歌い、落下傘降下や演習シーンも自衛隊の協力(クレジットはない)で実写映像を挿入し本格的。
裏事情を知る基地内の酒保の男は、上田忠好が薄気味悪く好演。
ライバル下着メーカーの野球チームも体験入隊中、親善試合の場面では いかりや長介とジャイアント馬場が登場する。
お宝探しと研修を終え、意気揚々と社へ帰還した一同が観せられたのは、彼らが下着を売り込む赴任地の記録映画。
ブラジャーなど知らぬ、ニューギニアの裸族女性の胸がユサユサ揺れている!
どうやら、外国課と名だけは立派だが、お荷物社員を厄介な場所へ所払いし辞めさせようとする社の思惑も垣間見え…という、皮肉なオチが効いていた。
サラリーマン喜劇の変種、お勧めです。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

『恐竜・怪鳥の伝説』を海外セールスした人って凄い!

チャンネルnecoで、『恐竜・怪鳥の伝説』(1977.4 東映)を久々に観る。
ダメ特撮ダメ造形と書かれることが多い映画だけど、私も寛容になっているので、今回は そんなに悪く感じなかった。
首を食われた馬の死体や、湖から引き上げた女性の下半身が食われていたというシーンなど、『ジョーズ』的な残酷ムードとお色気も盛っている。
職人監督・倉田凖二は、コドモ向けとして作っていない。
特撮だが、翼竜ランホリンクスは ともかく首長竜プレシオザウルスをもう少しハッキリ見せてくれると良かったのに、前景の雑木林がジャマ。
首がヘナヘナな上、這いずりすら出来そうもない造形を隠すつもりかもしれないが、それにしては二頭の戦いを直上から撮ったショットもあって。
造形・操演の大橋史典は一枚看板でクレジットされるが、全盛期を過ぎ技量も衰えていたのだろう(但し、惨殺死体の造形物はハッとする出来)。
協力者も操演補佐の1名だけで、合成や特撮美術スタッフは何故かクレジットされない。
東映作品なのに、何で矢島信男の特撮研究所に頼まなかったのか、謎。
ともあれ本作が、大橋の最後の大仕事になってしまった(1989年に74歳で死去)。


予告編は初見。世界40か国で公開決定と出るので、「オイオイ、いくら何でも嘘だろ」と思いIMDbで調べると。
日本公開と同年に、アメリカと西独で封切られていたのは間違いない。
イタリア、フランス、トルコ、ロシア、メキシコ、ギリシャ、エジプトでも公開されたようだ。
香港など東南アジア圏にも間違いなく売れたはずだから、大風呂敷すぎる惹句とは言えないな。失礼しました。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

となりの『ふたりのイーダ』の片隅に

日本映画専門チャンネルで、『ふたりのイーダ』(1976.11)を観た。

松谷みよ子の童話が原作、松山善三監督が制作委員会形式(学校などの団体鑑賞向けに券を売ったりするパターンの興行か)で作った良心作。初見。
山田洋次 脚本協力、木下忠司 音楽、村木忍 美術。
倍賞千恵子、山口崇、森繁久彌、松山夫人の高峰秀子と役者も一流。
広島の田舎・花浦(架空の地名か)が舞台。シングルマザーでライターの母(幼い頃 被曝している設定)が瀬戸内で取材中、花浦の祖父の家で ひと夏を過ごす事になった小4と3歳の兄妹(上屋健一 原口祐子)が、廃屋となった洋館で、動き喋る不思議な椅子に出会う。

原爆忘れまじと鎮魂がテーマだけに。
ファンタジーでも原作とは違い、祖父の家で兄妹が、広島や長崎の惨状を記録した写真集を開くくだりもあって油断できない。
タイトルの意味だが、ふたりのイーダとは。
「イーッだ!」するのがクセでアダ名がイーダの妹と、洋館の椅子の持ち主だったらしい少女イーダ(外人ではなく日本人。原爆で亡くなったことが暗示される。アンデルセンの童話「イーダちゃんの花」が好きだったので、椅子は名をイーダと覚えていたという設定)のこと。
椅子は、廃屋に やって来た妹をイーダと間違えたのだ。

この映画、イロイロと ご趣味の方も必見。
特撮ファンには、『ひょっこりひょうたん島』で有名な ひとみ座が担当した椅子。マリオネット式か?アウトドア場面が多いのに、実に巧妙な操演で驚きます。声は宇野重吉。原爆ドームで椅子が佇むシーンもある。
当時、テレビアニメ『タイムボカン』『ガッチャマン II』などでも使われたスキャニメイト画像を使った、水底から突き出る原爆犠牲者の腕や首の悪夢的イメージ。

モノクロで撮影した800本の走査線を持つビデオ映像を、アナログコンピューターで変換、カラライズ加工するもの。当時、東洋現像所に一台だけ納入されていたという。
あと、虹を扱っているのに、これまたダークな悪夢のアニメも挿入されます。
学校から動員で観に行って、トラウマになった人もいたんじゃないか。
あとは…すっぽんぽんで走り回る幼女ですかね?
なんせ文部省やPTA推薦の映画ですから、堂々と観るべし。
クレジットされてる、田中筆子(資料では氷屋のおばさん役)と大井小町(往診の看護婦か?)の出番が分からなかった。

ビジュアルと内容から、『となりのトトロ』『八月の狂詩曲』『この世界の片隅に』のファンは観ておくと良いだろう。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

2016年のマイベストを考える

毎年恒例の、2016(平成28年)マイベスト発表です。

 

・「MEKURU」小泉今日子50歳特集

・東宝=宝塚映画の実写版『サザエさん』シリーズ、日本映画専門チャンネルで放送

・日本製ゾンビ映画の良作『アイ・アム・ア・ヒーロー』

・『キングコング対ゴジラ』(1962 東宝)完全復元版 完成、日本映画専門チャンネルで放送

・『シン・ゴジラ』のインパクトと興行的大成功

・冨田勲の死、享年84

・遠藤憲一のCM、霜降りひらたけ「ホクトプレミアム!」松茸もアセる美味しさ

・たまたま読んだ小野不由美のホラー小説「残穢」(2012 新潮社)

・NHK土曜ドラマ『夏目漱石の妻』、美術も大健闘

・衝撃のドキュメンタリー『日本戦後史 マダムおんぼろの生活』(1970 東宝)、チャンネルNECOで放送

 

次点

・panpanyaのマンガ、風景の描きこみ

・虫コナーズCM、「グググ」と長澤まさみ…のワキの下

・栃木県宇都宮市 元自衛官が起こした連続爆発事件(10月23日)

・NHKスペシャル『戦艦武蔵の最期』

・NHK『ファミリーヒストリー 北野武』

・写真集「ウルトラマンの現場〜スタッフ・キャストのアルバムから〜」(小学館)

・漱石アンドロイド完成

まだ1週間あるんで、追加するかも。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

『結婚行進曲』

日本映画専門チャンネルで観た、市川崑の東宝第一回作品『結婚行進曲』(1951.12)。 期待してなかったが、面白い都会派コメディだった。
恋人の伊豆肇が会社をクビになり、怒った杉葉子(綾瀬はるか似ですよね)は営業部長のダンディな上原謙の邸宅に乗り込み、夫人の山根寿子に直談判。
その早口トークに惚れ込んだ上原は彼女をスカウト、セールスウーマンに雇って…。

会社は鋳造工業系でドアノブなどを作っているのだが、工事現場へも颯爽と出向き売り込む彼女の映像に、営業成績表の棒グラフアニメがオーバーラップ。
ぶっちぎりの売り上げで成績表の上まで伸びた棒が、クイッとターン。さらに下まで行って再ターンするのには笑った。
『億万長者』(1954.11)でも、核爆弾の恐怖で東京から沼津までダッシュする木村功に爆心地からの安全圏内距離がオーバーラップしたが。
アニメーター出身・市川ならではの視覚ギャグですね。

「当社の製品は頑丈で、ドアノブが すっぽ抜ける事はない」と杉はセールストークするが、営業部長の家に使ってあったのは…。
夫人の山根からの電話で上原が部屋のドアを慌てて開けると、すっぽ抜け 後ろに でんぐり返る!
スタントマンを使っているだろうが、あまりの派手さに爆笑。
なお、その前に杉も椅子に つまづき、見事にコケている。

上原と杉は原節子の出ている映画を観るが、これが何と成瀬巳喜男の名作『めし』。
製作の藤本真澄、シナリオの井手俊郎が本作と共通なので可能だった楽屋落ちだろう。
我々には時系列感覚が無いが、『めし』の公開は本作公開の約1ヶ月前、1951年11月なのだ!
映画ファンには言うまでもなく、上原と杉は こっちにも出演。
上原はスクリーンに映った「主演男優」の名を杉に聞いて、アクビをする。

若い2人と営業部長夫妻(ネットで読めるキネ旬のストーリー紹介で、上原は社長役となっているが、違う。社長は村上冬樹が演じており、出番は少ない)のアレコレに、風変わり・個性的な人物が絡んで、越路吹雪のビギン・ザ・ビギンまで聞ける。
年末公開の正月映画ならではのサービスか。
東宝技術部は、マット合成と相当数の場面転換ワイプ処理でテンポアップに貢献。額縁の山根の写真が動いたりもする。
80分強で終わるのもありがたい。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

『海底大戦争』

東映がアメリカと合作(下請け)した映画、『海底大戦争』(1966.7)。
劇場では観ていないが、小学生の頃にテレビで初見。

世界征服を企み、海底基地を築いているマッドサイエンティスト集団の野望を潰す、新聞記者と米海軍の活躍。

矢島信男による特撮が見どころの、怪奇色もある作品である。
少し前に海外版をネットで観たばかりだが、10月にチャンネルNECOで放送されたのは、83分の国内版(9巻 2304メートルなので、換算するとIMDbの90分表記は間違いだろう)。
シネスコサイズの映画と聞くが、スタンダードサイズだった。トリミング版なのか。
しかも東映マークが出ず、数か所 音声のみの黒味部分があるという、不完全な素材である。
どうやら発売されているDVDもこのバージョンらしく、アマゾンの販売ページに注記があった。
シネスコ版は失われたのかな?
ネットに上がっていた79分の海外版は、ビスタサイズだった。今回比較すると、どうやらスタンダードサイズの天地を さらにトリミングしたものらしい。
国内版は夕陽の海上を行く潜水艦の特撮カットで終わるが、海外版は その後に ちょっとしたオチ?が付いている。
当時ウルトラシリーズでも忙しかった成田亨が、武庫透 名義で手掛けた特撮美術。
人間を改造した寄り目のサイボーグ半魚人はイマイチだが、米軍潜水艦(MJ号のプロトタイプだね)やマッドサイエンティスト・ムーア博士の海底基地は良。
ミサイル発射台なんて、後のスタジオぬえメカみたいである。

在日外人俳優が多数出演しているが、気になるのは…ムーア博士役のエリック・ニールセンや、海軍中佐役フランツ・グルーベルの お肌。ブツブツが目立ち妙に汚いのは何故かね?
東映のメイク担当、匙を投げたのだろうか。
なお、博士の子分で最後に主役の千葉真一と対峙するのは、室田日出男。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(2) * pookmark

『有難や節 あゝ有難や有難や』

観たかった『有難や節 あゝ有難や有難や』(1961.5 日活)を、ようやく録画。
ケーブルテレビに加入しチャンネルNECOが観られるようになってから、初めての放送か?
助演してる守屋浩のヒット曲・有難や節に乗せ展開する、西河克己監督のアクション小品だ。

なんと、地元・愛知県 岡崎や豊川や蒲郡でロケされた、ご当地映画でもあった。


踊りの教本に出てるような人型イラストがテンポ良く題字に変わる、タイトルが まず傑作。
交通事故情報を抜け目なくキャッチ、スクラップ自動車を集め家業の借金返済を計る主役・和田浩治が乗ってる、ナンバーの無い1人乗り小型車はオリジナルなのか?

彼は豊川にいる祖父の和尚(大坂志郎)を訪ねる途中で、建設工事がらみのトラブルに巻き込まれる。

ヒロイン役は いつもの清水まゆみ。和田の父と妹役は、森川信と吉永小百合。他に山内明 内田良平 近藤宏ら。


小林信彦が かつて面白場面として書いており確認したかった、昭和天皇風の浜口庫之助(有難や節の作詞作曲者。2年後の松竹映画『拝啓天皇陛下様』でも、昭和天皇役でノークレジット出演。バラが咲いた 夜霧よ今夜も有難う 愛のさざなみ みんな夢の中 人生いろいろ…などを作ったヒットメーカー、1990年に73歳で没)が登場する場面。
ホーネンス耕運機(豊川に本社がある共栄社の製品)に乗って豊川稲荷に参拝するという、あからさまなタイアップシーンである。
浜口は足を怪我し松葉杖をついているらしく、全快祈願のために参拝したという設定。
ラストの祝祭でも、治った体で再び耕運機に乗り登場している。
田中明夫 演じる悪ボスの子分で、高品格 山口吉弘と一緒にいる かまやつひろし がかけてる巨大メガネにも注目。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

淀川長治 2題

今村昌平が、1976年に淀川長治をインタビューというかプロファイルした、『映画監督競作シリーズ われらの主役』(1976.9〜77.6 東京12チャンネル 全43回)の1本をチャンネルNECOで観た。
淀川が結婚しない事について尋ねる時、「中性的」という言葉を使っていたが、氏が衆道の人というのは当時も映画関係者は知っていたろうから。
今村なりの、ギリギリを狙った表現だったんでしょうな。

ついでに、日本ロケのアメリカ映画『八月十五夜の茶屋』(1956)を久しぶりに観る。
マーロン・ブランドが通訳の日本人(沖縄人)を演じた、占領下の沖縄が舞台の進駐軍コメディ。
大映が協力。
グレン・フォード、エディ・アルバート、根上淳と出演者も一流。
沖縄ロケではなく、奈良県生駒にオープンセットが組まれた。
雑誌「映画の友」時代の淀川が、本作のロケハンに来たダニエル・マン監督にインタビューしたとき、前々作『バラの刺青』のファンだった事もあり意気投合。
ヘンすぎる日本描写も指摘し、役まで与えられ出演したというのを自伝で読んでいたので、昔 ワーナーホームビデオで初レンタルされた時に観てみたことがある。
パッケージにも、確か淀川が出ていると書いてあったが…よく分からんかったような。
今回 観たワイド版で、ハッキリ確認した。
上映時間の1/3が過ぎた頃。
自伝に書いてあった通り、米配給所で炎天下に並んだ清川虹子を筆頭とする村の御婦人たちを差し置き、後から来た美人芸者の京マチ子に「さぁ入って、中で お茶でも」と言って贔屓する配給係の1人を演じていた。
ロングショットで1分ほどの出番だが、セリフもちゃんとある。
ワーナーホームビデオ版はスタンダードにトリミングされていたから、画面左隅にいる事の多い淀川は切れちゃって、分からなかったのか?
リハーサルも含め撮影・拘束期間は結構長く、ギャラは当時の換算レートで計7万円(1ドル360円時代だから、200ドルか。当時、東京のラーメンは一杯40円)だったそうな。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

『日本戦後史 マダムおんぼろの生活』

『にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活』(1970.6 日映新社)を、チャンネルNECOで観る。
今村昌平監督(クレジットは演出)。

大阪万博で日本が浮かれている最中。
映画斜陽期で、刺激の強い作品を作って集客しようとする事情もあったろうが。

なんとメジャーの東宝が配給・公開した、「ブラックな」ドキュメンタリーである。
ポスターには、今村の東宝第一回作品と書かれていた。
氏は、東宝に入り助監督として黒澤明に付きたかったというから、内心 嬉しかったのでは。
なお同時上映は、新藤兼人 監督の『触覚』。

山陰(吉倉と書かれた駅名標や交通安全の看板が出てくるが、この地名は存在しないようで。本作はドキュメンタリーであるが、これらは小道具=フェイクの可能性があり、ひょっとしたら鳥取の倉吉を暗示しているかも知れぬ)で馬喰の娘として生まれ、終戦時は15歳だった女の半生。
これで家が貧乏ならば、お涙頂戴となるところだが、ちょっと違う。
実家は裕福な肉屋→高校中退し結婚→パチンコ屋経営→離婚・上京し横須賀で接客業を、やがてバー ONBORO経営へ。
ステップアップ?しながら、シタタカに豪快に生きるマダムになった女と その親族。

資料では、

赤座たみ…母親

赤座悦子…長女(マダム)

赤座あけみ…悦子の娘

赤座昌子…悦子の娘

赤座千枝子…悦子の娘

と書かれているが。

冒頭の電話シーンで今村は、マダムをアカザエミコと言っている。地名と同じく仮名にしているのだろうか。

代理で出演交渉に応じる、マダムの母親が強烈!


戦後25年間のニュースフィルムを観せつつ、マダムに体験を語らせる今村。
高校をやめるキッカケは被差別部落出身である事を晒された為だったこと、横須賀でアメリカ兵相手の稼業、創価学会入信…。
その一方で、警官(戦後のドサクサ期、肉屋も闇商売のガサ入れ情報が必要だった事もあり結婚したが、結核で入院し退職後は、金遣いが荒くなり女遊び三昧。ナント母親とも関係を持ってしまい、別れる事に)や早大生(夫の遊びに対抗し積極的に攻めて交際へ)とデキちゃう やり手でもある このマダムの告白には驚かされる。
凄く肉感的だが、美人じゃない。
別れた警官との間には娘が2人、店を手伝っている。
このマダム、私は決して関わりたくないタイプだが、映画を観ている分には面白すぎる。
今村監督が取り上げるわけだ。

彼女の出自を表すため、冒頭から屠殺場のシーン。これにベトナム戦争の死体写真がモンタージュされるので、モノクロ撮影とはいえドン引きする方もおられるか。
演出助手としてクレジットされた長谷川和彦は、屠殺場の撮影に参加していたという。

テストテスト(笑)のアメリカ人男性遍歴の末、合格と判定したオレゴン出身の若い水兵と再婚し幼い娘(これが千枝子か)も生まれた。
店をたたんで、夫・娘とアメリカのサンディエゴへ行き新商売を模索するという彼女、その後の人生も垣間見たかった気もするが…余計なコトか。おそらく本作の出演料は、その費用に充てられたんだろうな。

出演者である赤座ファミリー(この苗字だけは、仮名じゃないようだ)が故人となったので、ようやくCS放送解禁?
マダムの生き様は、本で読んだ、家族乗っ取りを始める以前の、尼崎事件主犯・角田美代子の半生にダブって見えた。
マダムに「メンスは何時でした?」と聞く今村、オールナイトニッポンの鶴光みたい。

キネ旬のストーリー紹介は、本作の複雑さを伝えていないが。
若干補足し、引用する。

横須賀の丘の上に、一軒の立派な家がある。
この家の主人は、60を越えた元気な婆さん・たみ である。
今日はアメリカへ遊びに行っていた長女・悦子がおみやげを買いこんで帰ってきた。
悦子は、堂々と肥ったバーのマダムである。
お人好しの次女も嬉しそうに話を聞いている。アメリカには、三女が米軍のパイロットと結婚して住んでいて、今度子供が生まれたのを機会に悦子が代表格で行ってきたというわけである。
悦子の娘たち、即ち婆さんの孫たちも、バスト1メートルをこえようというグラマーぞろい。
女ばかり三代のバイタリティにあふれた一家である。
悦子は、戦後まもなく山陰の田舎を飛び出して、女であるという条件を武器に奮戦してきた。
原爆、ヤミ市、戦争孤児、パンパン狩り、彼女たちの特需景気もたらした朝鮮戦争。本当にあの頃は忙しかった。
黒いジョーも死んだし、白いジョーも死んだ。そして沢山生まれた混血の孤児たち。エリザベス・サンダースホームの昔のフィルムを無心に眺める、混血の孫娘。
彼女たちがひとつの生きた戦後史ならば、ニュースも単なる過去の再現でなく、生きた姿として登場してくる。
この一家の長女・悦子に戦後25年間の記録フィルムを見せ、それに触発されて あけすけに語られる感想や一家の生々しい記録。
そこに戦後日本の歩みと、この一家の歩みがときに交錯し、ときに離れ、二つの流れとなって生きはじめる。そしてカメラはさらにこの一家の現実の生活にも鋭く斬り込んでくる。父権も夫権もないこの女三代。増殖するたくましい女たち。
今もその生き方を変えようとしない女たち、彼女たちの戦後には日付はなかった。

どうでもいい話だが。

今村は、日本人スタッフも協力した香港製の特撮映画『中国超人 インフラマン』(1975)の企画をしてたんだね!

本作の資料をネットで調べるとき、知った。クレジットに名は出ていないようだが…。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(2) * pookmark

『アギーレ・神の怒り』の衝撃

イマジカBSで、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の傑作『アギーレ・神の怒り』(1972 西独)を久しぶりに観て、やはり打ちのめされる。
本当に凄い映画なり。


16世紀中盤の1560年末から翌年初頭、日本では桶狭間の戦いがあった半年後。
黄金郷エルドラドを探し、南米アンデスの秘境へ向かう、ペルー・インカ帝国を征服したスペイン人フランシスコ・ピサロ(1541年に暗殺されている)のいとこで、ゴンサロ・ピサロが率いる探検隊(これは史実に基づくが、時代設定を変えているようで、この人物は探検に失敗後、1548年に内紛で処刑されている)。
険しい崖の道を下ってくる彼らが、アリのように見えるロングショットのインパクト!初見のときには驚愕した。
部下のウルスアが隊長となった分遣隊は、濁流の おさまるのを待ち川を筏で行く(黄金郷は山中にあるはずなんだが、分遣隊は何故か川を下っている。その理由はラストに判明)が、大自然と熱病と原住民の怒り(キリスト教を冒涜したと、人の良さそうなカヌーの原住民夫婦を牧師が瞬殺するんだからね)によって、ついに全滅するのだった。 


クラウス・キンスキー演じる副隊長アギーレは、見かけ通りの腹に一物ある冷酷な男だが、溺愛しているらしい15歳の美しい娘・フローレスを連れている。
演じているのは、セシリア・リヴェーラというティーン?女優。
クラウスの次女で、早くから美少女として知られた女優ナスターシャ・キンスキー(1961年生、ロリ趣味で知られるロマン・ポランスキー監督と交際して名を上げたのは有名。その結果、彼女主演の名作『テス』が生まれた)を彷彿とさせる美貌だが、似た娘をキャスティングしたんだろうか?
IMDbによるとセシリアは、1999年にスペインのテレビシリーズに1話だけ出ているようだが、他に出演作は無いようだ。
なお、クラウスの長女で やはり女優のポーラ・キンスキー(1952年生 当然ナスターシャ似だが、美しさでは負けてる印象)は父から、5歳の頃より19歳で家を出るまで性的虐待を受けていた事を2013年に自伝で告白。
19歳ってことは、この映画が撮影された頃まで、そういう事を されていたのか?
ナスターシャは されていなかったようだが、やはり父への危機感はあったということだ(そうは言うが…2人が父と仲よさげに写ってる写真が残されているけどね。父と娘には複雑な感情があったのでしょう)。


こういう実話を知った後に映画を観直すと、アギーレと娘が一緒にいる いくつかの場面が、演じるクラウス・キンスキーの「リアル」を投影したものと感じられる。
本作のメイキングも含む、ヘルツォークとクラウスの狂気をはらんだコラボ作品群の記録『キンスキー、我が最愛の敵』(1999 ドイツ イギリス 合作)も私は観ているが、当時はソコまで思い至らなかったなぁ。
アギーレはラストのモノローグによると、川を下って海に出てから、母国スペインに反旗をひるがえして領土を奪おうとしていたのだ。
さらに、「娘と結婚して純血の帝国を築き」王になろうと思っていたんだから!

※ 日本題名は『アギーレ・神の怒り』だったはずだが、今回の放送では『アギーレ/神の怒り』と表記されていた。

J・KOYAMA * ターンノーン通信 2015〜 * comments(0) * pookmark

このページの先頭へ